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住宅販売書入れ時が開幕も、中古住宅と新築住宅は販売件数が鈍化

by • May 30, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off1918

Existing And New Home Sales Decrease, While Homes For Sale Increase.

4月の中古住宅販売件数と新築販売件数をおさらいしていきます。

全米リアルター協会(NAR)が発表した米4月中古住宅販売件数は年率546万件と、市場予想の555万件を下回った。前月560万件から2.5%減となり、3ヵ月ぶりに減少。住宅販売書入れ時がスタートするなかで、3ヵ月ぶりの低水準となる。2007年2月以来の高水準となった2017年11月の572万件からまた一歩遠ざかった。4月の販売件数は前年比で1.4%減となり、2ヵ月連続でマイナスに沈んだ。

単月での内訳をみると、一戸建てが484万件と、前月の499万件(修正値)から3.0%減少した。ヘッドラインと同じく、3ヵ月ぶりに減少している。逆に複合住宅は1.6%増の62万件と、2ヵ月連続で増加した。

4大地域別では、3地域で減少し1地域が横ばいで増加はゼロだった。前月は2地域で増加していた。複合住宅の販売件数が増加した割に、同住宅のシェアの大きい北東部は4.4%減の65万件、中西部で±0%の129万件となる程度だった。IT企業が集まる西部は3.3%減の119万件、住宅市場規模が最大で一戸建て比率が高い南部も2.9%減の233万件と、それぞれ2ヵ月連続で減少している。

在庫件数は前月比9.8%増の180万件と、3ヵ月連続で増加した。前月比で大幅増を示したものの、前年比では引き続き6.3%減とマイナスをたどる。在庫の増加の伸びが在庫を上回ったため、在庫相当は前月の3.5ヵ月から4.0ヵ月と、過去最短を記録した2017年12月の3.2ヵ月を上回る水準を保つ。販売日数は26日と前月の前年の30日を下回り、足元で最短となった。NARによれば、販売件数のうち57%が販売開始1ヵ月後に購入されたという。

中央価格は前年比で5.3%上昇の25.79万ドル。足元のトレンドに沿い、雇用統計の平均時給の伸び率を大幅に上回る水準を保つ。中央価格の前月比では3.2%上昇し、2ヵ月連続で3%超と力強い伸びを遂げた。

買い手の内訳は、以下の通り。

・差し押さえ物件 3%=前月は3%、前年同月は5%
・ショートセール(担保残債価額よりも安い価額で販売する住宅) 1%=前月は1%、前年同月は1%
・新規購入者 33%>前月は30%、前年同月は34%
・現金購入者 21%>前月は21%と直近で最高、前年同月は21%
・住居用ではなく投資向け 15%=前月は15%、前年同期は15%

中古住宅販売件数、一戸建てと複合そろって減少。

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(作成:My Big Apple NY)

発表元であるNARのローレンス・ユン主席エコノミストは、今回の結果を受け「引き続き在庫逼迫により、販売件数が押し下げられている」と説明した。さらに「住宅金利の上昇」を挙げ住宅の値上がりが継続する可能性を点灯、前月に続き販売件数の重石となる可能性を付け加えた。

▽米4月新築住宅販売件数、住宅価格は前年比で下落も減少

米4月新築住宅販売件数は年率66.2万件と、市場予想の68.0万件を下回った。前月の67.2万件(69.4万件から下方修正)を1.5%上回り、3ヵ月ぶりに減少。春到来に合わせ住宅市場の書き入れ時が開幕するなか、中古住宅販売と足並みをそろえ鈍化した。

4大地域別では、2地域で増加し前月と変わらず。今回は北東部が11.1%増(前月の減少から反転)の4.0万件だったほか、南部が0.3%増(3ヵ月連続で増加)の35.5万件となる。中西部は±0%の9.1万件。西部は7.9%減(前月から減少に反転)の17.6万件だった。

新築住宅販売件数、景気回復サイクルでの高水準は維持。
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(作成:My Big Apple NY)

庫総数は、前月比0.7%上昇の30.0万件。販売件数が増加し在庫が横ばいだったため、在庫相当は5.4ヵ月と、前月の5.3ヵ月から延びた。

中央価格は31.24万ドルと、過去最高を更新した前月の33.54万ドル(修正値)に届かず。前年比では0.4%下落し、上昇基調を9ヵ月で止めた。前月比でも6.9%下落し、過去4ヵ月間で3回目のマイナスを示した。

――ここで、住宅の在庫数をみてみましょう。

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(作成:My Big Apple NY)

中古住宅の在庫総数は引き続き低水準ながら、新築住宅の場合は2009年4月以来の30万件乗せまで回復してきました。新築の在庫相当も5.4ヵ月と、住宅バブル期の5ヵ月割れを回避する状況です。とはいえ、新築住宅が中古住宅に割高であることに変わりはありません。米5月消費者信頼感指数が示すように労働市場の見通しが明るい割に、所得見通しは慎重である点も気掛かり。消費者信頼感指数のうち、住宅市場の購入見通しもまさかの2年半ぶり低水準でした。

外部環境は欧州の政局混乱で金利上昇に歯止めが掛かりつつあるものの、米株安の引き金を引けば資産効果が低下するため、住宅市場が成長に寄与しても小幅に限られそうです。さらにトランプ政権は、米中通商協議妥結後にも関わらず、中国への関税賦課のオプションを残し、企業活動を下押ししかねず。リスク許容度後退に伴う金利低下が住宅市場の追い風となるかは、不透明と言えるでしょう。

(カバー写真:ben wisely/Flickr)

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