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敗者復活で三ツ星に返り咲いたフランス人シェフ、日本で振るう技

by • July 9, 2019 • Latest News, Restaurant ReviewsComments Off5864

The French Chef Who Has Earned Michelin 3 Star And World Best Chef, Shows Off His Skills In Tokyo.

日本人は判官びいきの傾向が強いですよね。古くはその語源となる源義経から阪神まで、幅広い。そんな日本人には、こんなシェフの名店をお勧めします。ANAインターコンチネンタル36Fに位置する、「ピエール・ガルニェール」です。

ガルニェール氏はフランス中東部ロワール県アピナックで生まれ、レストランを経営する父の影響もあってシェフの道へ進みました。仏のインターコンチネンタル・ホテルなどで修行を積み重ね、父の店で働いた後、自身の名を冠したレストランを1981年にオープンします。1986年には二ツ星を、開業から11年後の1992年には念願の三ツ星を獲得。しかし、1996年には敢えなく債務過多が仇となり三ツ星を返上しました。

ここまでくれば、膝を落とし全てを諦めそうなものです。ガルニェール氏はというと、逆境に挫けませんでした。フランス国立農学研究所(Institut National de la Recherche Agronomique)の物理化学者エルヴェ・ティスと出会い、分子ガストロノミーの観点から新たな境地を切り拓き、味の化学反応を発見し何層も連なる複雑な自身のテイストを築いていったのです。それからは破竹の勢いで、1998年には三ツ星に返り咲き、2010年には溜池山王のANAインターコンチネンタルに店を構えるようになり、2015年には”世界で最も優秀なシェフ”に選出されました。

基本的には、コースでお一人様2万2,000円からのこちら、色鮮やかな逸品を引き立たせるグレーを基調に、ローマ皇帝を始め高貴な殿上人の色である紫を差し色としたインテリアで、内装はアールデコな空気を残しつつ21世紀らしいモダニズムを漂わせる仕上がりとなっています。カップルシートも用意し、個室でなくとも贅沢な配置で2人だけの会話を満喫できるのも、さすがアムールの国フランス人らしい演出かと。東京タワーを目の前に、一品毎に新たなシンフォニーを提供する豊潤な味わいは、さすが分子ガストロノミーの先駆者たるガルニェール氏ならではです。何より、ニューヨークのとあるミシュラン星獲得レストランと一線を画し、日本食の個性を存分にまぶし奇をてらうことなく、フレンチの本懐を表現しつつ和の風味をプラスしているのが、日本人には嬉しいばかり。だって、お箸の国の人ですから、やっぱりフレンチ本流を楽しみたいのですもの。

言葉にするのも陳腐。来た、見た、勝ったの境地。

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(出所:My Big Apple NY)

ANAインターコンチネンタルのスタッフ陣も、日本人フランス人問わずシェフの下で正確かつ機敏に、それでいてエレガンスを忘れないサービスで飽きさせません。ここでお一人ずつ名前をご紹介したいほど、丁重ななかに、それぞれの料理よろしく、まるでミルフィーユのような繊細さと、奥ゆかしさと、親しみやすさと・・・何重もの手厚いマナーが挟み込まれていました。日本人メインシェフの流暢なフランス語もご愛敬で、主人もビックリ仰天しておりましたよ。

弊職は主人のチョイスで結婚記念日で訪れたこちら、もちろん世界各地で店舗展開しており、米国でも例外ではありません。しかし、場所はネバダ州ラスベガスなんですよね。ニューヨーク市ですと、こちらでご紹介したように競争も激しく、家賃の問題もありますから、ガルニェール氏の戦略は決して負け戦とならないよう入念に練られたと考えられます。

(カバー写真:46137/Flickr)

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