Now TPP Agreement Is ‘Close’, What’s The Implication For The Strong Dollar?
安倍首相は、4月26日から5月3日の訪米を前に環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐり日米で合意が近いとウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙のインタビューで明らかにしました。安倍首相の発言前、米国では16日にオバマ米大統領に貿易促進権限(TPA、ファストトラック)を付与する案を超党派が提出。ファストトラックにより米政権が米議会への事前通告を条件に結んだ他国との通商協定に対し、米議会は修正案を提出できず批准か反対のみを採択するのみとなり、速やかな発動につながるためこう呼ばれています。
TPP合意に向け両者の間で下準備が着々と進むなか、気になるのがその内容ですよね。米上院財政委員会のオリン・ハッチ委員長(共和党、ユタ州)、ロン・ワイデン筆頭理事(民主党、オレゴン州)、ポール・ライアン米下院歳入委員長(共和党、ウィスコンシン州)が署名したファストトラック付与法案の声明では、TPAについてこう表記しています。「米国の輸出を拡大させ、米国の被雇用者、製造業および農業労働者により恵まれた職を与え、起業家や企業家のために新しい経済的機会を創造する、力強く高水準な貿易協定を支援する具体的な規則」。その上で、「新たな貿易交渉の指針には為替操作との闘いといった、足元の経済的問題を反映する」との文言が挟み込んでいました。米大統領選を控え、製造業関連の指標が著しく減速し雇用に悪影響を与えかねず、行動に出たのでしょう。新車販売台数でGMやフォードが前年比で落ち込みをみせるなか、オバマ米大統領も17日に「日本でアメリカ車を見掛けないのは不平等」と批判していたことには、ドル高に危機感を募らせる自動車産業の圧力を感じさせます。
イタリア首相訪米の記者会見でも、2016年に米大統領選を控え自動車産業に配慮。
(出所:J. David Ake/AP)
民主党の米大統領候補に名乗りを挙げたヒラリー・クリントン陣営も、ドル高に不快感を表しつつあります。選挙キャンペーン広報担当のニック・メリル氏がニューヨーク・タイムズ(NYT)紙に宛てた声明によると、クリントン候補がTPPを支持するには、1)アメリカでの職、賃上げ、米国内で雇用を創出する機会などを守れるか、2)国家安全保障の強化につながるか、3)為替操作を是正できるか——の条件を挙げていました。
甘利経済再生担当大臣とフロマン通商代表部(USTR)代表との交渉で、どのような妥結が結ばれるのか。シティグループの高島修チーフFXストラテジストは「米議会がTPAの審議を本格化させるなか、為替相場は両国間にとって従来以上にセンシティブな問題となろう」と予想。年金運用改革を通じ、公的マネーの円売りがドル円を高止まりさせていた事情を鑑み「官邸、内閣府、財務省、厚生労働省などいずれかが公的マネーによる外貨投資に何らかの修正を試みるか否か注目に値する」と指摘していました。具体的な是正に動くのではなく、日米首脳会談で安倍首相が為替安政策を否定するリップサービスにとどめるのか。答えは、もうすぐ出てくるのかもしれません。
為替動向を踏まえ、米国内だけでなく国際通貨基金(IMF) までドル高けん制に動き始めた点も大いに注目したい。15日公表の世界金融安定報告では、金融安定リスクが高まった要因に「ドル高」を挙げていましたよね。Fedの出口政策にも、注文をつけています。
米連邦公開市場委員会(FOMC)投票メンバーにも、変化が現れています。アトランタ連銀のロックハート総裁は16日、米経済に「不透明性が高まっている」、「ドル高は純輸出を押し下げる」、「1−3月期の成長率は著しく弱い」と述べた上で、「(利上げを開始までに)望ましい結果が実現しているという、直接かつ肯定的な証拠を確認したい」と発言。1日の「6月から9月となる公算が大きい」から、利上げに慎重な姿勢へ鞍替えしていました。
奇しくもフィッシャーFRB副議長は同じ日に1−3月期以降の景気回復言及し、賃上げなどの兆候を確認していると語り利上げに前向きな姿勢を示しました。ただ、2月27日の「6月と9月に(利上げの)可能性があるようだ」とする発言から時期を明言しなくなった点は、留意しておきたいところです。
(カバー写真:peasap/Flickr)
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