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米5月雇用統計、9月利上げへコマを進める

by • June 5, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off2395

May Jobs Report Opens The Door For September Rate-Hike.

米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比28.0万人増と、市場予想の22.0万人増を大幅に上回った。前月の22.1万人増(22.3万人増から下方修正)を超え、年初来で最高の伸びを達成。西海岸の港湾労働者ストライキや悪天候がはく落した後、力強いペースを取り戻している。3−5月期平均は20.7万人増で、4月時点の19.1万人増および1−3月期の19.5万人増を上回った。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が26.2万人増となり市場予想の21.5万人増から加速した。4月の20.6万人増(21.3万人増から下方修正)も大幅に上回り、NFPに続き年初来で最も高い伸びを示す。民間サービス業は25.6万人増となり、4月の18.5万人増(18.2万人増から上方修正)を軽々と超えていった。

(サービスの主な内訳)
・ビジネス・サービス 6.3万人増、増加トレンドを維持<前月は6.6万人増
そのうち派遣は2.0万人増、3ヵ月連続で増加>前月は1.6万人増
・貿易/輸送 5.0万人増、増加トレンドを維持>2.3万人増
そのうち小売は3.1万人増、5ヵ月連続で増加>前月は1.3万人増
・教育/健康 7.4万人増、増加トレンドを維持>前月は6.4万人増
・娯楽/宿泊 5.7万人増、増加トレンドを維持>前月は1.0万人増
そのうち食品サービスは1.7万人増、前月の2.6万人増を含め2ヵ月連続で増加も2014年平均の3.3万人増には届かず
・政府 1.8万人増、4ヵ月連続で増加>前月1.5万人増
・金融 1.3万人増、14ヵ月連続で増加>前月は0.8万人増
・情報 0.3万人減、前月から減少に反転<前月は0.8万人増

財生産業は0.6万人増と、4月の2.1万人増を含め2ヵ月連続で増加。2013年12月以来の減少を迎えた前月の2.1万人減から回復をたどる。製造業が前月を上回りつつ、建設の伸びは鈍化した。

(財政産業の内訳)
・建設 1.7万人増、2ヵ月連続で増加<前月は3.5万人増
・製造業 0.7万人増、増加トレンドを維持>前月は0.1万人増
・鋼業 1.7万人減、5ヵ月連続で減少<前月は1.5万人減(石油・ガス採掘は0.5万人減)、5月の鋼業の結果は2009年5月以来で最大の減少幅、なお鋼業全体の2014年・月平均は4.1万人増

5月NFP、ホリデー商戦最終戦を迎えた2014年12月以来の高水準。
nfp
(出所:BLS)

時間当たり平均労働賃金は前月比0.3%の上昇の24.96ドル(約3120円)となり、市場予想の0.2%および前月の0.1%増を超え、年初来で最も高い伸びを遂げている。前年比は2.3%の上昇となり、4月の2.2%を上回り、2013年夏場以来の高水準。米4月コアPCEデフレーターはもちろん、米4月消費者物価指数コアの前年比を超えた。

週当たりの平均労働時間は3ヵ月連続で、34.5時間だった。製造業の平均労働時間は40.7時間となり、前月と変わらず。2014年6月に続き、2007年以来の高水準に並んだ2014年11月の41.1時間以下にとどまる。

失業率は、5.5%と3月の水準へ戻した。市場予想および前月の5.4%を上回ったものの、2008年7月以来の6%割れを維持し、リーマン・ショック以前にあたる2008年5月以来の低水準を続けている。3月米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2015年末予想のレンジを超える水準を保った。マーケットが注目する労働参加率は、62.9%。4月の62.8%を上回り、1月の高水準に並ぶ。なお3月は62.7%で、2014年12月に続き1978年2月以来の低水準を示現していた。

失業者数は前月比12.5万人増となり、前月の2.6万人減に反し4ヵ月ぶりに増加に転じた。雇用者数は27.2万人増で、12ヵ月連続で増加。就業率は4月まで4ヵ月連続で59.3%を経て、59.4%へ上昇。約5年ぶりの高水準を更新した。

経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている不完全雇用率は、前月に続き10.8%。9ヵ月連続で2008年10月以来の12%割れを維持している。平均失業期間は30.8週と、前月の30.7週から短縮。失業期間の中央値は11.6週と4月の11.7週から短縮し、少なくとも2009年以来の低水準を示現した。

フルタイムとパートタイム動向をみると、フルタイムは前月比0.2%減の1億2077万人となり5ヵ月ぶりに減少した。逆にパートタイムは1.6%増の2774万人と、3ヵ月ぶりに増加に転じている。

イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、かつ「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点表は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-△
4月は10.8%、4月と変わらず少なくとも2008年9月以来の低水準を維持。不完全失業者数は前月比1.1%増の665.2万人と、前月の減少分をほぼ打ち消した。

2)長期失業者 採点-○
失業期間が6ヵ月以上の割合は28.6%と、4月の29.0%を下回り直近で最低。平均失業期間は30.7週と、4月の30.8週を下回り3月の水準へ並んだ。6ヵ月以上の失業者数も5月に250.2万人と、4月の252.5万人から0.9%減少。

3)賃金 採点-○
5月は前月比0.3%増となり、年初来で最高に。5月の前年同月比も2.3%増と4月の2.1%増を超え、5ヵ月ぶり高水準だった1月の水準に並ぶ。もっとも、2012年11月から続く1.9−2.2%のレンジを維持している。ただし生産・非管理職の前年比は2.0%増にとどまり、管理職を含むヘッドライン以下にとどまった。

4)労働参加率 採点-○
5月は62.9%。4月の62.8%および3月の62.7%(2014年12月に続き、1978年2月以来の低水準)から改善。非労働人口は9299万人となり、過去最悪を更新した4月の9319万人から0.2%減少した。軍人を除く民間労働人口は前月比0.3%増の1億5745万人となり、2ヵ月連続で増加した。

BNPパリバは、結果を受けて3月の雇用統計の鈍化や1−3月期成長率の落ち込みが「一時的だったと判断できる」と振り返った。NFPの項目別でも「原油安による鋼業、および製造業への波及効果を除けば30万人増を達成できた」と指摘。その上で、「9月利上げの可能性を強めた」と結んだ。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、Fed番担当のヒルゼンラス記者の署名で「6月利上げを招かず(Jobs Report Not Likely to Trigger June Rate Hike)」との記事を配信。ブレイナードFRB理事やタルーロFRB理事が景気回復に懐疑的な目を向けるように、今回のパワフルな雇用統計を受けても6月は利上げを手控えると予想した。同時に不完全失業者が減少するなど労働市場のたるみが減退しつつあるほか、2012年以降のNFP平均は20万人超えをたどっているとも指摘。Fedは、成長鈍化局面でも利上げを検討する余地があるとも付け加えた。ただし、低調な労働生産性は失業率の低下に反し賃金を抑制するケースがあるとの懸念も示す。

ロイターによるとFF先物は直前まで12月の利上げを44%織り込んでいたものの、米5月雇用統計に反応し利上げ予想は前倒しされた。10月利上げへ軸足を移し、織り込み度は54%へ上昇したという。米10年債利回りも、米5月雇用統計を受けて一時2.4%を超え2014年10月以来の水準へ上振れした。

——米5月雇用統計・NFPは予想外に好調な数字を叩き出し、利上げ織り込み度も一気に前倒しされました。失業率が上昇したとはいえ労働参加率は回復し賃金も改善しており、4−6月期の米景気減速懸念を払拭。国際通貨基金(IMF)が年内利上げを見送るよう声を上げたものの、今のところFedに届きそうにありません。

今回の結果を受け16〜17日開催のFOMC声明文の変化に加え、経済・金利見通しがどのように修正されてくるか注目。特にFF金利見通しは、3月FOMC時点の中央値を超えてくるのでしょうか。9月に利上げしてくるならば、年内1度にとどまるかどうかも見極めが必要です。

(カバー写真:Carabinerpr)

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