Yellen Suggests Rate Hike This Year, But Cites The Outlook Is ‘Highly Uncertain’.
イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は10日、クリーブランドで景気見通しについて講演し金融政策をめぐり「年後半のいずれか時点で利上げ開始が適切となりうる」とあらためて述べた。もっとも「経済とインフレ動向には、高い不確実性が残ると強調したい」とも発言。「予想もしない展開により、利上げへの第一歩が遅れるあるいは早まる場合もありうる」と付け加え、年内利上げの方向性だけでなく利上げ時期が後ろ倒しとなる可能性に言及している。
労働市場には、慎重な認識を示す。失業率が低下してきたものの、労働参加率の低下が一因と指摘。従来通り景気循環要因のほか、ベビーブーマー世代の退職者増加という構造的要因も挙げた。経済的要因でパートタイムを余儀なくされている不完全失業者にも注目。雇用者全体の4.5%を占めているといい、「景気拡大期においては歴史的な高水準」と懸念を寄せた。また、離職者数の伸び悩みにも言及している。最後に賃金動向を挙げ「上昇の兆候は、明白ではない」とも発言。ただし「直近では賃金の伸びに回復のサインを確認しており、最大雇用という目標に近づきつつある可能性を示す」と楽観的な見方も付け加えた。
インフレ動向については、原油安・ガソリン価格下落・ドル高で抑制されてきたと述べた。低インフレが賃金の上昇ペースの重しとなり、景気減速につながるとの懸念も表明。こうした要因は「減退しつつあり、来年初めにはく落する」との見通しを描きつつ、超低金利の現状ではインフレ低迷に対応する余地は狭いとも語った。
労働市場とインフレと比較し、経済全般にはポジティブなトーンを打ち出した。米経済のファンダメンタルズは堅調で数年先に拡大ペースが加速すると予想。雇用も合わせて改善し、失業率は一段と低下すると見込む。特に賃金上昇は消費活動を刺激するとの考えも示した。住宅価格および株価上昇も支出を支援するとの認識も表明。一方で、懸念材料として1)設備投資の鈍化、2)住宅市場——を挙げる。住宅市場ついては足元で価格が上昇し販売件数が増加したとはいえ「弱い雇用増加ペースと賃金伸び悩みが二世帯住宅の需要を生み、若い世代は両親との同居を選択する傾向にある」とも付け加えた。
親と同居のミレニアル層は、着実に増加中。
(出所:Pew Social Trends)
ギリシャについては、表紙などを含め15ページある講演原稿の9ページ目に1度登場するのみで「ユーロ圏の経済回復は基盤を固めつつあるが、ギリシャ問題は未解決のままだ」と表現するにとどめた。中国株安が金融市場を賑わせているものの、一切触れていない。
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、Fed番のヒルゼンラス記者の署名で「イエレン、年内利上げ路線を変更せず(Yellen: Fed Remains on Track to Raise Rates in 2015)」との記事を配信した。ギリシャ債務危機や中国株安という波乱に見舞われた後とはいえ、年内利上げスタンスを維持したと伝えた。また、賃上げペースが加速しつつある兆候に言及したと報道。特に「最大雇用という目標に近づいた」との発言に注目を寄せた。9月利上げの可能性が低いと示唆した前回より、中立寄りへシフトしている。
12月利上げ派に属するBNPパリバのローラ・ロスナー米エコノミストは、講演を受け「全体的に中立的で金融政策の自由度を保った」との見解を示した。バークレイズのマイケル・ゲイピン米主席エコノミストは「6月FOMC後の記者会見やFOMC議事録よりハト派トーンが緩んだ」とまとめている。同氏は、9月利上げ派の1人だ。
——イエレンFRB議長、引き続き冴え渡るバランス感覚をいかんなく発揮してくれました。「年内利上げ」のメッセージを送りつつ、思いがけない衝撃が米経済を直撃した場合は利上げを遅らせる可能性にも言及。労働市場の進展に疑問の目を向けつつ、賃金動向に触れ最大雇用に接近しているとも語り、尻尾をつかませてくれません。ただマーケットはハト派寄りと認識したようで、講演後にダウ平均は一段高。引け前には約1週間ぶりに17800ドル乗せを伺う動きをみせました。中国やギリシャへの言及を控えたことで、過剰な憶測を排除したとも言えますね。
(カバー写真:FRB/Flickr)
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