December FOMC Preview : Waiting For Lift-Off.
泣いても笑っても、15〜16日のは米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。運命の瞬間が迫る前に、エコノミストの予想をチェックしていきましょう。
▽モルガン・スタンレー、エレン・ゼントナー米主席エコノミスト
・FOMCでは利上げに踏み切り、超過準備預金金利(IOER)を0.25%から0.50%へ引き上げると同時にリバース・レポ取引の金利を0.05%から0.25%へ引き上げ、FF金利誘導目標を0.25~0.5%に設定するだろう。利上げ開始後、1−3月期の据え置きを経て6月、9月、12月に追加利上げを行う見通し。2016年のFF金利誘導目標は、1.125%を見込む。
・長く緩やかな利上げというメッセージを送るため、経済・金利見通しを下方修正させる。2016年の中央値は9月の1.375%から1.125%、2017年は9月の2.625%から2.125%、2018年は3.375%から3.125%、長期予想は3.50%から3.25%へ引き下げるだろう。
・声明文では、インフレをめぐりドル高による輸入物価押し下げ効果を明示してくるだろう。労働市場と経済をめぐる見通しへのリスクは引き続き「概して均衡」としつつ、「世界経済と金融市場の動向を注視する」との文言は外してくるのではないか。政策見通しおよびガイダンスの段落では、「労働市場の改善とインフレが目標値である2%へ切り返すという確信」がある限り、適切とのスタンスを打ち出すと見込む。足元でインフレが下振れしているため、さらに「適切な政策の道筋を決定する上で、インフレ動向を注視する」との文言を挟み込む公算が大きい。
・リバース・オペ・ファシリティは現在、翌日物で3000億ドル、ターム物(満期までの期間が数日にわたる証券)で3000億ドルとなり、合計で最大6000億ドルの預け入れが可能だ。FOMC議事録によると、参加者は引き上げに不快感を表している。リスク・オフ相場局面で投資家がリバース・オペに殺到し別の投資ツールから資金を吸収するリスクがあるためだ。またマネー・マーケット市場でFedの存在感を強めたくはないだろう。IOERを上限に、リバース・レポでの金利を下限にしてFF金利を引き上げていきたいFedは、利上げに際し一時的に上限引き上げあるいは撤廃する方針を声明文とは別の形で発表する可能性がある。あるいは、据え置いたとしても徐々に引き上げていく可能性を点灯させるのではないか。
・超過準備預金への付利は2週間の平均金利と平均準備残高に基づいてきたが、6月FOMCでRegulation D(準備預金制度に関する規則)を一部変更し日次計算へシフトすることが決まった。IOERを0.25%から0.50%へ引き上げた場合、以前なら0.375%だったところ、新規則では引き上げ前が0.25%、引き上げ後は0.5%となり、特に問題は生じない見通しだ。
・利上げに合わせ、公定歩合も引き上げるだろう(11月24日公表の公定議事録でも12地区連銀中で9連銀が引き上げを提案し、8月下旬の5地区連銀から増加)。2010年に金融市場が安定してきた段階で公定歩合を0.50%から0.75%へ引き上げた前例がある上、仮に引き上げたとしてもFF金利とのスプレッドは0.625%とヒストリカルでみて非常に低い水準にとどまる。公定歩合も25bp引き上げ1.0%に設定し、今後も徐々にスプレッドを広げていくだろう。ただ公定歩合は地区連銀が決定しFOMCによる決定の副産物という点は、留意しておきたい。
▽バークレイズのマイケル・ゲイピン米主席エコノミスト
・Fedは12月の利上げ開始後、2016年に3回、75bp引き上げる見通しだ。米11月NFIB中小企業楽観度指数のうち賃金引き上げ見通しが9年ぶり高水準だった上、特殊技能職不足を指摘するなど労働市場のひっ迫を確認した。米10月雇用動態調査(JOLTS)でも、求人数は過去最高に近い水準を保つ。家計部門は健全で、米11月新車販売台数は景気後退以前の高水準を維持し、米11月小売売上高は伸び悩みんだとはいえ値下がりが主因だった。
・ドットチャート(金利見通し)では、2016年末までに100bpの利上げを織り込んだ数値に下方修正されるだろう。2018年は、50bpにとどまるのではないか。長期金利見通しも、従来から25bpの引き下げを予想する。
・インフレは米11月輸入物価が前年比で3.4%低下したようにドル高、さらに原油安を反映して鈍い動きを示す。インフレ見通しを下方修正するだろうが、Fedは原油安といった要因を挙げ中期的な水準へ切り返すとの確信を持って利上げしてくるに違いない。
S&P500は、11日までに3営業日連続で年初来リターンはマイナス。
(出所:Stockcharts)
▽Fed、利上げ後のゼロ金利回帰を懸念=WSJ
米国における直近の景気拡大は78ヵ月に及び、1854年以降で33回経験した景気拡大のうち29回を超えた。しかしながら、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、Fed番のジョン・ヒルゼンラス記者の署名記事にてゼロ金利へ回帰する可能性を伝えている。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は16日、2006年以来の利上げを決定する見通しながらWSJ紙のエコノミスト調査では65人中、過半数が5年以内のゼロ金利への回帰を予想していた。そのうち10名は、欧州中央銀行(ECB)が歩むマイナス金利の道へ向かうと見込む。FF金利先物市場も2016年末の金利予想は0.76%にとどまり、FOMCの9月時点の予想値1.375%を大きく下回る。
Fedの間でも1)金融危機の余波、2)高齢化、3)労働生産性の伸び鈍化――を受け均衡実質金利が下振れしているとの説が浮上。つまり利上げ開始後もヒストリカルに見て低金利が続くため、景気減速の局面での利下げ余地が限られてくるというわけだ。例えば2007年9月から2008年12月までは5.25%ポイント引き下げ、2001年1月から2003年6月には5.5%ポイント引き下げてきた。1990年7月から1992年9月の利上げサイクルも、上昇幅は5%ポイントに及んだ。しかし金利水準が比較的低い現状では、不測の事態が発生した場合はゼロ金利へ押し戻されかねない。インフレが3年以上にわたって目標値である2%に届かない可能性があるほか、ジャンク債や商業不動産のバブルが崩壊する懸念が横たわるだけに、Fedはゼロ金利への回帰を懸念していることだろう。非伝統的な政策からの解除は、すなわち来た道へ引き返す可能性を示唆していそうだ。
——ヒルゼンラス記者の指摘は、すでに10月FOMC議事録で明記されていたのでサプライズではありませんね。むしろ、議事録を振り返るとFedはゼロ近辺金利への回帰を恐れているというより想定済みな気が。フィッシャーFRB副議長がイスラエル中銀総裁時代に機動的に利下げ・利上げに踏み切っていた過去を振り返ると、中央銀行家のプライドより経済への影響を重視して舵取りするのではないでしょうか。
(カバー写真:Josh/Flickr)
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