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米4~6月期家計債務、低金利を追い風に住宅ローンを含め過去最大

by • August 15, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off2489

Low Rates Push Mortgage Loan Outstanding And Household Debt To The Highest In Q1.

ニューヨーク地区連銀が発表した調査によると、4~6月期の全米家計債務残高は13兆8,600億ドルだった。前期比1,920億ドル増加(1.4%増)し、10期連続で2008年7~9月期の12兆6,750億ドルを超え過去最高を更新。活発なデレバレッジ(=借入の返済)が収束した2013年4~6月期の11兆1,500億ドルからは、24.3%上回る。

家計債務は、学生ローンに加え住宅ローンが2008年7~9月の水準を超え過去最高を更新。

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(作成:My Big Apple NY)

住宅部門と非住宅部門の内訳は、以下の通り。

・住宅ローン→9兆4,100億ドル(前期比1,620億ドル増、2期連続で増加、前年比4,070億ドル増)
・ホームエクイティ→4,000億ドル(前期比70億ドル減と10期連続で減少、前年比330億ドル減)
・非住宅関連債務→4兆600億ドル(前期比400億ドル増、前年比2,000億ドル増)

住宅ローン債務残高は、9兆4,100億ドルと金融危機直後の2008年7~9月期の9兆2,940億ドルを超え、過去最高を更新した。借換を含む新規住宅ローン組成額は4,741億ドルと、2014年7~9月期以来の低水準となった前期の3,440億ドルを上回った。米中通商協議が物別れに終わり中国通信機器大手ファーウェイへの禁輸措置が発表され、米中首脳会談でも明確な打開策が見出せないなか需要が回復したとみられる。なお、2回目の利上げ前に駆け込み需要に支えられた2016年末は6,170億ドル増加し、2007年7~9月期以来で最大を記録した。一方で、テーパリング終了を意識した2014年4~6月期は2,860億ドルと、2000年以来で最低を記録していた。

住宅ローンの新規組成額のうち、75.5%が優良プライム層である720点以上となり、1年ぶりの水準を回復した。逆に、信用スコア620点以下のディープ・サブプライム層は3.9%と、2017年10〜12月以来の4%台に乗せた前期の4.2%から低下した。高信用力の顧客層で需要が改善した結果、不動産業者がサブプライム層向けの融資を拡大せずに済んだ可能性がある。とはいえ、住宅ローンの信用スコア中央値は759点と前期と変わらず、5期連続ほぼ横ばいだった。なお2003年以降で優良プライム層である720点以上の最高は2012年4~6月期の82.5%、最低は2007年1~3月期の51.8%となる。

住宅ローン組成額の信用スコア別シェアでは、720点以上が上昇し620点以下が低下。

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(作成:My Big Apple NY)

住宅ローンでの90日以上の延滞率は0.9%と、前期の1.0%を下回り2006年4〜6月期以来の大台割れを迎えた。ホームエクイティは1.1%と、前期の1.3%から低下し、2007年4~6月期以来の1%割れが迫った。

なお住宅ローン組成額が持ち直すなか、大手銀の住宅ローン組成額は前期比で減少した。住宅ローン融資最大手の米銀ウェルズ・ファーゴは前期比で6%増の530億ドルと4期ぶりに増加しただけでなく、前年同期比でも61%増と4期ぶりに増加した。JPモルガン・チェースは前年同期比14%増の245億ドルと10期ぶりに前年比プラスに転じ、前期比では63%増へ反転した。

非住宅関連債務、主な内訳は以下の通り。

・自動車ローン→1兆3,000億ドル(前期比170億ドル増、前年比590億ドル増)
→ローン残高は33期連続で増加し、24期連続で過去最高を塗り替えた。自動車ローン組成額は1,556億ドルと、年末商戦の反動もあって1年ぶりの低水準だった前期の1,390億ドルを上回った。

新規の自動車ローン組成のうち、信用スコア620点(低信用で返済能力が乏しいサブプライム層)以下の割合は21.0%と前期の20.1%を上回り、2010年10~12月期以降で2番目の低さだった前期の19.3%を超えた水準を維持している。参考までに、2004年以降でサブプライム層のシェア最高は2006年4~6月期につけた31.8%、最低は2010年7~9月期の17.1%となる。信用スコア中央値は703点と、1年ぶりの低水準となった。今回、90日以上の延滞率は4.6%と2011年10〜12月期以来の高水準だった前期の4.7%に近い水準を保った。

なお自動車ローン貸出残高で米銀1位のJPモルガンの自動車ローン組成額は前年同期比2%増の85億ドルと4期ぶりに増加し、前期比では8%増と2期連続で増加した。反対に2位のウェルズ・ファーゴは前年同期比43%増の63億ドルと、4期連続で増加した。前期比では、17%増と2期連続で増加した。

自動車ローン組成額のシェア、全体的にまちまち。

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(作成:My Big Apple NY)

自動車以外の主なローン動向は、以下の通り。

・クレジットカード→8,700億ドルと2018年10~12月期につけた過去最高に並ぶ(前期比180億ドル増と1年ぶりに減少した前期から増加に反転、前年比390億ドル増)
→ローン残高は、年末商戦を受けて2008年7~9月期の8,660億ドル超え過去最高を更新した2018年10~12月期に並ぶ。90日以上の延滞率は前期と変わらず8.3%となり、2015年4〜6月期以来の高水準を維持した。なお、過去最低は2016年7〜9月期の7.08%である。

・学生ローン→1兆4,800億ドル(前期比80億ドル減、前年比730億ドル増)
ローン残高は、過去最高の更新を2期で止めた90日以上の延滞率は10.8%と、2018年1~3月期以来の低水準だった。

家計債務全体での90日以上の支払い延滞率は2.9%と、前期の3.1%から低下し2007年4~6月期以来の3%割れを迎えた。残高全体に占める90日その他を含めた延滞そのものの割合は全体で4.4%となり、2006年7~9月期以来の水準へ低下した。

(作成:My Big Apple NY)

――家計債務は、10期連続で金融危機のさなかに記録した過去最高を更新しました。Fedの利下げ示唆を受けて金融市場が持ち直した通り、家計純資産は可処分所得比で684.3%と、1年半ぶりの低水準だった2018年10~12月期の659.8%から改善。結果、貯蓄率は8.3%と、2012年10~12月期以来の最高となった前期の8.8%から低下しています。その割に、1~3月期の個人消費はさえませんでしたが、4~6月期に見事な復活を遂げていましたね。

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(作成:My Big Apple NY)

家計資産の内訳をみても、金融資産が71.3%と前期の70.5%から上昇。過去最高となる2014年1~3月期の72.2%以下ながら改善しています。

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(作成:My Big Apple NY)

可処分所得比での家計資産も98.9%と少なくとも2003年以降で最低です。バランスシートは健全と言えます。問題は、世界経済の最大の不確実性である通商政策がどうなるか。少なくとも米7月消費者信頼感指数は高水準を保ち、購入指数も改善していました。米7月雇用統計でも平均時給は前年比で3%超えの力強さを維持しており、貯蓄率も過去と比較すると高水準にあります。米中貿易摩擦が苛烈さを増すとはいえ、個人消費の急激な冷え込みによる短期的な景気後退入りリスクは低いのではないでしょうか。

(カバー写真:Markus Spiering/Flickr)

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