Market Starts To Expect Oil Price Comeback After Producers Cut Capital Spending.
原油先物は、前週末から回復の芽を伸ばしつつあります。2014年6月以降で約60%も下落してきましたが、今年に入ってからの下落分を打ち消す勢いです。サウジアラビアをはじめとする石油輸出国機構(OPEC)が減産という調整カードを切ることに躊躇する一方、石油メジャーを中心に続々と設備投資計画の削減を発表。在庫が調整へ向かい、シェールオイル・ガス関連の効率化を通じ利益率が改善し、原油先物が上昇に転じるとの観測が浮上しているためです。CNBCで看板番組を持つジム・クレイマー氏は、「原油相場に底打ちしてきた感がある 」と言及していました。オーストラリアが利下げ競争に参画するなど、欧州中央銀行(ECB)をはじめ米国を除く世界各国が緩和政策を相次いで打ち出していることも、世界景気回復への期待を煽り原油市場の追い風となったことでしょう。
以下は、石油メジャーを中心とした10−12月期決算内容と2015年の設備投資計画です。
▽エクソン・モービル
石油メジャーが寄り前に発表した10−12月期(第4四半期)決算では、純利益が前年同期比20.5%減の65億7000万ドルだった。減益ながら、税制上の恩恵やベネズエラの資産をめぐる有利な仲裁で10億ドル押し上げられたという。調整済み1株当たり利益は1.56ドルと、市場予想の1.34ドルより強い。売上高は21%減の872億8000万ドルだったものの、市場予想の875 億8000万ドルを上回った。
部門別の利益動向をみると、化学部門は34.8%増の12億2700万ドルだった。精製・販売を手がける下流事業は、45.8%減の4億9700万ドル。特に米国での精製マージンが低下した。上流部門の石油・天然ガス生産は19.4%減の54億6800万ドルとなる。石油生産量は、前年同期から3.8%減少。設備投資は5.4%増の104億6000万ドルだった。
決算発表とともに、1−3月期の自社株買いを当初計画から50%超削減し10億ドルとした。原油先物が2014年6月のピークから約60%も下落するなか、 2014年10−12月期の30億ドルから、3分の1へ引き下げている。
▽シェブロン
石油メジャーが寄り前に発表した10−12月期(第4四半期)決算では、純利益が前年同期比20.6%減の34億7100万ドルだった。2009年以来で最も低い水準ながら、資産売却により5億7000万ドル押し上げられたという。1株当たり利益は1.85ドルと、市場予想の1.63ドルを上回る。売上高は18%減の461億ドルだったものの、市場予想の306億5000万ドルを大きく超えていった。
部門別で利益動向をみると、原油安を背景に精製・販売・石油化学などの下流事業が大幅増益を達成した。同部門の利益は約3倍増の利15億1800万ドルに上る。ただし、探鉱・生産など上流部門の利益は45%減の26億7300万ドルにとどまった。その他は7億2000万ドルの赤字となり、前年同期比から損失額は倍増した。
2014年末の生産量は日量258万石油換算バレル(BOE)で、前年同期と変わらず。2015年の生産量は、2014年の水準から3%の増加を見込む。設備投資計画は、原油安を背景に前年比13%減の350億ドルとした。
2015年の自社株買いは、現金確保を狙い中止を発表。原油先物が2014年6月のピークから約60%も下落し事業再編に直面するなか、パット・ヤリントン最高財務責任者(CFO)は、「市場環境の変化」を理由に挙げた。
シェール・ブームは、設備投資縮小でいったん幕引きへ。
(出所:Wall street daily)
▽BP
10−12月期(第4四半期)決算は、純損益が44億700万ドルとなり前年同期の10億4000万ドルの黒字から赤字へ転落した。北海、アンゴラなどの資産における減損のほか子会社BGグループの評価損も重なり、税引き後ベースで36億ドルの損失を計上している。再調達原価基準、すなわち在庫変化を除いたベースでの損益は、9億6900万ドルの損失。前年同期の15億1000万ドルの黒字から赤字に反転した。一方で調整済み再調達減価基準ベースでは22億ドルの黒字となり、市場予想の15億ドルを上回った。予想外にロシアのロスネフチ部門が健闘しており、利益は4億7000万ドル。市場予想では、7億5000万ドルの赤字が見込まれていた。売上高は21%減の739億9700万ドルだった。
2015年の設備投資見通しを下方修正した。探査費用を削減させるほか、上流部門の事業計画を延期させ、下流部門の事業も一部で中断させる方針。2015年の設備投資は約200億ドルとなる見通しで、従来計画の240億−260億ドルを大幅に下回った。従業員数は2014年に前年比で増加したものの、今後はコスト削減をねらいリストラ費用として10億ドルを充てる。
▽ロイヤル・ダッチ・シェル
10−12月(第4四半期)決算は、純利益が前年同期比57%減の7億7300万ドルだった。売上高は15%減の923億7000万ドル。配当は1株当たり前年同期比4%増の0.47セントだったものの、7−9月期と横ばいだった。2015年の設備投資を前年比で縮小させると発表。今後3年間の設備投資計画から、150億ドル以上削減させる方針を打ち出した。
▽コノコフィリップス
10−12月(第4四半期)決算は、純損益が3900万ドルの損失を計上し前年同期の25億ドルの黒字から転じた。原油安が背景。フリーポート液化天然ガス事業の参画中止など特殊項目を除く調整済み1株当たり利益は 0.60ドルとなり、市場予想 の0.59ドルより強い。売上高は25.2%減の118億5100万ドルと、市場予想の117億3500万ドルを上回った。
2015年の設備投資計画を2014年12月時点の135億ドルから 115億ドルへ引き下げた。 原油安が背景にあり、米国における陸上での掘削・探索プロジェクトを後ろ倒しさせる計画。設備投資の下方修正は、2回目となる。 2015年の生産の伸び率は、 リビアを除いた継続事業ベース で2−3%と予想。2014年 12月の3%から、下方修正した。
▽トタル
2015年の設備投資計画を10%削減させると発表。パトリック・プヤンヌ最高経営責任者(CEO)は1月21日に世界経済フォーラムの席で、北海油田・ガス田および米国でのシェールオイル・ガス生産の設備投資を削減させる方針をを明らかにした。原油安を背景とした利益率の悪化を背景に挙げた。
——フュールフィックスによると、採掘リグ稼働数は1月30日週に1543基となり前週比で90基も減少していました。8週連続の減少となっています。そのうち石油採掘リグ稼働数は94基減少の1223基と、2010年6月以来の水準へ落ち込んでいました。採掘リグ稼働数がここまで減少しているにも関わらず、エネルギー関連企業の設備投資削減でさらに生産が調整すれば、原油先物の底打ちに賭ける投資家が増えてもおかしくはありません。
石油メジャーのほか油田サービスのハリバートン、ハリバートンによる買収が決定しているベーカー・ヒューズ、シュルンベルジェもそれぞれ人員削減および設備投資計画の縮小を発表済み。こうしたエネルギー関連企業の努力を評価し、現状の原油相場を”落ちるナイフ”と見る向きは後退しつつあるようです。1−3月期の決算見通しは依然として暗くドル高圧力もくすぶりますが、悲観のなかで生まれ懐疑のうちに育っていく相場となるのでしょうか。
(カバー写真:Feyecon)
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